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六角穴付ボルト(キャップボルト)の強度区分とは?
(10.9 / 12.9 / A2-70)

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六角穴付ボルトの強度区分は、ボルトがどれだけの力に耐えられるかを示す「性能ラベル」です。 同じM6でも、強度区分が違うと許容できる締付け(軸力)が変わり、ゆるみ・破断・相手材のつぶれ(座面陥没)などのリスクも変わります。 そのため、購入・設計・メンテナンスのどの場面でも「強度区分の意味」を最初に理解しておくことが重要です。

このページでわかること
  • 10.9 / 12.9 の数字の読み方(意味)
  • A2-70(ステンレス)の読み方(意味)
  • 強度区分の選び方の目安と、よくある誤解

1)図解で理解する:10.9 / 12.9 は何を示している?

10.9 強度区分の読み方(引張り強さと耐力)

10.9 の意味(図の読み方)

  • 左側(10)= 引張り強さの区分(目安:1000MPa級)
  • 右側(.9)= 耐力の割合(引張り強さに対して約90%)

現場では「10.9指定」と言われたら、まず必要な締結力(軸力)を確保しつつ、安全域を維持するという意図を読み取ります。 一般的な機械装置の締結でよく使われ、バランスの良い強度区分です。

12.9 強度区分の読み方(引張り強さと耐力)

12.9 の意味(図の読み方)

  • 左側(12)= 引張り強さの区分(目安:1200MPa級)
  • 右側(.9)= 耐力の割合(引張り強さに対して約90%)

10.9より高強度ですが、強度を上げれば必ず安全になるわけではありません。 相手材がアルミ・樹脂・薄板などの場合、ボルトが強すぎると座面がつぶれる(座面陥没)、 あるいは相手側のねじ山が先に壊れることがあります。 「どこが先に壊れる設計になっているか」を意識して選定するのが重要です。

2)A2-70 の読み方(ステンレス系)

例:A2-70 は、主にステンレスボルトで使われる表記です。 「A2」は材質グループ(オーステナイト系ステンレス)を、「70」は強度(引張強さの区分)を表します。 鋼の10.9/12.9とは同じ物差しではないため、数値だけで単純比較しないのが安全です。

A2-70 強度区分の読み方(引張り強さ)

A2-70 の意味(図の読み方)

  • 「A2」= オーステナイト系ステンレスの区分
  • 「70」= 引張り強さ 約700MPa級(目安)

A2-70は「高強度を狙う」というより、耐食性が必要な環境で安定して使うための選択肢として理解すると判断しやすいです。 一方で、ステンレスは締結条件によって焼き付き(かじり)が起きやすいことがあるため、潤滑やトルク管理などの工夫が重要になります。

ステンレス鋼の組織区分と強度区分の関係

ステンレスボルトはすべて同じ性質ではありません。 材質の組織(オーステナイト系・フェライト系・マルテンサイト系)によって、 強度区分や熱処理の有無、機械的性質が異なります。

ステンレス鋼の組織区分と強度区分の関係図
図のポイント
  • オーステナイト系(A1-A5):耐食性重視、冷間加工で強度向上
  • フェライト系(F1):磁性あり、強度は中程度
  • マルテンサイト系(C1-C4):焼入れ可能で高強度化できる

A2-70はこの中のオーステナイト系に分類されます。 そのため「焼入れで強度を上げるタイプ」ではなく、 加工硬化によって強度区分が決まる点が特徴です。

3)強度区分は「引張強さ」と「耐力(降伏点)」の目安

強度区分は、ボルトが引っ張られたときに耐えられる強さの目安を数値で示したものです。 技術的に特に重要なのが次の2つの考え方です。

  • 引張強さ:ボルトが破断するまでに耐えられる最大の応力(ざっくり「限界の強さ」)
  • 耐力(降伏点):ここを超えると伸びが残る応力(ざっくり「安全に使える範囲の上限」)
ポイント

ボルト締結は「ほどよく伸ばしてバネにする」ことで、締結力(軸力)を安定させます。 そのため耐力(降伏点)を超えない範囲で締めるのが基本です。 逆に、耐力を超えて締めてしまうと塑性変形が起こり、軸力が低下してゆるみやすくなることがあります。 「強度区分」は、こうした締結の“安全域”を考えるうえでの出発点になります。

4)10.9 / 12.9 の読み方(鋼・合金鋼系)

例:10.912.9 のように「小数点つき」の強度区分は、主に鋼(合金鋼)系の高強度ボルトで使われます。 一般に、前の数字が大きいほど引張強さの区分が高く、後ろの「.9」は耐力が引張強さに対してどの程度の割合かを示します。 (例:.9なら、おおむね耐力が引張強さの約90%というイメージです。)

強度区分 最小引張強さの目安 区分の意味・特徴 主な使用例
10.9 約1000 MPa 合金鋼系の高強度区分。
引張強さ1000MPa級、耐力はその約90%。
産業機械、設備機器、一般的な高強度締結部
12.9 約1200 MPa 10.9よりさらに高強度。
高荷重設計向けだが、相手材との強度バランスが重要。
高応力部位、剛性が求められる構造部
A2-70 約700 MPa オーステナイト系ステンレス。
強度より耐食性を優先する区分。
屋外設備、水回り、腐食環境下の締結
覚え方(超シンプル)
  • 10.9:引張強さ ≒ 1000MPa、耐力 ≒ 900MPa
  • 12.9:引張強さ ≒ 1200MPa、耐力 ≒ 1080MPa

※実務では、締付トルクは「摩擦(トルク係数)・潤滑・表面処理」にも左右されます。 強度区分は“材料の強さの目安”であり、トルクは“締結条件の結果”です。強度区分だけでトルクを決めないのがコツです。

5)強度区分の比較(ざっくり把握用)

強度区分 最小引張強さの目安 区分の意味・特徴 主な使用例
10.9 約1000 MPa 合金鋼系の高強度区分。
引張強さ1000MPa級、耐力はその約90%。
産業機械、設備機器、一般的な高強度締結部
12.9 約1200 MPa 10.9よりさらに高強度。
高荷重設計向けだが、相手材との強度バランスが重要。
高応力部位、剛性が求められる構造部
A2-70 約700 MPa オーステナイト系ステンレス。
強度より耐食性を優先する区分。
屋外設備、水回り、腐食環境下の締結

6)選び方の目安(購入・設計で迷わない)

  1. 図面・仕様の指定がある場合は最優先(強度区分・材質・表面処理)
  2. 腐食環境(屋外・水回り・薬品)なら、まず耐食(ステンレス等)を検討
  3. 締結力が重要(ゆるみが致命的/高荷重)なら、10.9→12.9の順で検討
  4. 相手材が弱い(アルミ・樹脂・薄板)場合は、強度だけ上げず「座面設計・座金・締付管理」もセットで考える
よくある誤解(要注意)
  • 「強度区分が高いほど常に安全」→ 相手材の破損や座面陥没が先に起きることがある
  • 「ステンレスなら万能」→ 焼き付き(かじり)や環境条件による腐食の可能性がある
  • 「同じMサイズなら同じ強さ」→ 強度区分で許容軸力・締結設計は大きく変わる