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溶接ナット・T型溶接ナットを使う板金製造工程別の締結部品選定ガイド 溶接ナットを使う工程と用途

溶接ナットを使う板金製造工程と用途別のネジ選定ガイド

溶接ナットは、薄板や箱形フレームの裏側に工具が入らない箇所へ、めねじを先付けするための締結部品です。自動車部品、制御盤、筐体、建設機械カバー、搬送装置フレームでは、板金加工後にウエルドナットを抵抗溶接し、後工程でボルト固定できる構造を作ります。

工程1:製品仕様確認と溶接ナット位置設計

工程名

製品仕様確認、締結点設計、溶接ナット位置決めです。

工程内容(仕様書ベース)

板厚、相手ボルト径、締付トルク、取付方向、作業工具の進入方向、電着塗装またはめっき後のねじ通りを確認します。JIS B 1196 溶接ナット、JIS B 1052 ナットの機械的性質、ISO 898-2 炭素鋼及び合金鋼製ナットの機械的性質を基準に、ナット呼び径と板厚を決めます。

なぜ必要か

溶接ナットは板金へ一体化するため、位置を誤ると後工程の部品が取り付きません。設計段階でボルト径、座面寸法、かしめ代、溶接突起の向き、治具逃げを固定することで、量産時の手直しとねじ山不良を防止します。

使用製品

  • ウエルドナット:板金に抵抗溶接して、裏側作業なしでボルト締結用のめねじを作る製品です。
  • T型溶接ナット:薄板や長穴周辺で座面を広く取り、回り止め性を確保する溶接ナットです。

用途・役割

制御盤の取付レール固定、車体ブラケット固定、筐体カバー固定、搬送機のセンサー金具固定、建機カバーのサービスパネル固定に使用します。

選定基準

強度区分は相手ボルトの8.8以下を基準に、ナット側は保証荷重に余裕を持つ区分を指定します。材質は鋼製を基本とし、相手材はSPCC、SPHC、SECC、溶融亜鉛めっき鋼板、高張力鋼板を想定します。使用環境は屋内筐体、車載ボディ内部、塗装前板金、電着塗装ライン投入品です。規格はJIS B 1196、JIS B 1052、ISO 898-2を確認します。

引用仕様書名または参考基準名

JIS B 1196 溶接ナット、JIS B 1052 ナットの機械的性質、ISO 898-2 Fasteners Mechanical properties of nutsです。

次工程

板金展開、下穴加工、溶接治具設計へ進みます。

工程2:板金展開と下穴加工

工程名

レーザー加工、タレットパンチ加工、プレス抜きによる下穴加工です。

工程内容(仕様書ベース)

溶接ナットの呼び径に合わせて、板金へボルト逃げ穴または位置決め穴を加工します。JIS B 0405 普通公差、JIS B 1196 溶接ナットの寸法基準をもとに、穴径、穴位置、端面からの距離、曲げ線からの距離を管理します。

なぜ必要か

下穴が小さいとボルトが通らず、下穴が大きいと溶接ナットの位置決め精度が落ちます。曲げ線に近すぎる位置へ溶接ナットを置くと、曲げ加工後にナット座面が傾き、ボルトの斜め入りが発生します。

使用製品

  • ウエルドナット:下穴を基準に位置決めし、抵抗溶接で固定します。
  • T型溶接ナット:薄板の広い座面固定、長穴近傍、サービスカバー取付部に使用します。

用途・役割

加工穴をナット中心の基準にして、後工程のボルト組付け位置を決定します。T型溶接ナットは座面が広いため、薄板筐体で締付荷重を分散します。

選定基準

強度区分は組付けボルトの強度区分4.8、8.8に合わせます。材質は鋼製溶接ナットを基本とし、板材は冷間圧延鋼板、熱間圧延鋼板、表面処理鋼板を指定します。使用環境はプレス加工後、曲げ加工前、溶接スパッタ管理が必要な板金ラインです。規格はJIS B 1196、JIS B 0405、ISO 2768を確認します。

引用仕様書名または参考基準名

JIS B 1196 溶接ナット、JIS B 0405 普通公差、ISO 2768 General tolerancesです。

次工程

曲げ加工、プレス成形、溶接治具へのセットへ進みます。

工程3:曲げ加工と溶接治具セット

工程名

板金曲げ加工、治具ピン位置決め、溶接ナット仮セットです。

工程内容(仕様書ベース)

曲げ加工後の板金を専用治具に載せ、基準穴、外形基準、曲げ面を使って位置決めします。溶接ナットは突起部を板金面へ密着させ、電極で加圧できる方向にセットします。JIS Z 3001 溶接用語、JIS Z 3140 スポット溶接部の検査方法を参考に、加圧、通電、保持の工程条件を標準化します。

なぜ必要か

溶接ナットは突起部が板金へ接触していないと、通電時に発熱位置がずれて溶着不足になります。治具でナットの回転、浮き、逆向きを止めることで、ねじ中心の位置ずれと溶接不良を防ぎます。

使用製品

  • ウエルドナット:丸穴または角穴周辺へセットし、突起溶接で固定します。
  • T型溶接ナット:板金端部や狭いフランジ部で、回り止めと座面確保を同時に行います。

用途・役割

自動車シートブラケット、バッテリーケース、制御盤取付板、産業機械カバーの内側に、後付けボルト締結用のめねじを形成します。

選定基準

強度区分は締結後の引張荷重、せん断荷重、繰返し振動荷重に対して相手ボルトと同等以上の保証荷重を持つ仕様にします。材質は溶接性を優先して鋼製を選びます。使用環境は抵抗溶接機、プロジェクション溶接機、ロボット溶接ライン、手投入治具ラインです。規格はJIS B 1196、JIS Z 3001、JIS Z 3140を確認します。

引用仕様書名または参考基準名

JIS B 1196 溶接ナット、JIS Z 3001 溶接用語、JIS Z 3140 スポット溶接部の検査方法です。

次工程

抵抗溶接、外観確認、ねじ通り確認へ進みます。

工程4:抵抗溶接によるウエルドナット固定

工程名

プロジェクション溶接、加圧通電、溶接ナット固定です。

工程内容(仕様書ベース)

電極で溶接ナットと板金を加圧し、ナット突起部へ電流を集中させて発熱させます。突起部を溶融させ、板金とナットを一体化します。AIAG CQI-15 Welding System Assessment、JIS Z 3140 スポット溶接部の検査方法を参考に、電流、加圧力、通電時間、保持時間、電極摩耗を管理します。

なぜ必要か

薄板に直接タップを立てると有効ねじ山数が不足します。溶接ナットを使用すると、薄板でも十分なねじかかり長さを確保でき、繰返し脱着するカバーやブラケットを安定して固定できます。

使用製品

  • ウエルドナット:プロジェクション溶接で板金に固定し、量産品の内側めねじとして使います。
  • T型溶接ナット:ナットの倒れを抑えたい箇所、取付荷重が広い範囲にかかる箇所に使います。

用途・役割

ボルトで機器、ブラケット、ヒンジ、レール、アース端子、カバーを固定するための母材側ねじとして機能します。裏側にスパナを入れられない閉断面構造でも、表側からボルトを締めるだけで組付けできます。

選定基準

強度区分は相手ボルトの締付トルクに対して、ねじ山破壊より先に板金側が変形しない仕様を選びます。材質は鋼製を基本とし、溶接後に電着塗装、粉体塗装、三価クロメート処理を行う工程に合わせます。使用環境は屋内機器、車載内部部品、建設機械カバー、搬送装置架台です。規格はJIS B 1196、JIS B 1052、ISO 898-2、AIAG CQI-15を確認します。

引用仕様書名または参考基準名

JIS B 1196 溶接ナット、JIS Z 3140 スポット溶接部の検査方法、AIAG CQI-15 Welding System Assessmentです。

次工程

溶接後検査、ねじゲージ確認、引張確認へ進みます。

工程5:溶接後検査とねじ通り確認

工程名

外観検査、ナット位置検査、ねじゲージ確認、押込み確認です。

工程内容(仕様書ベース)

溶接ナットの浮き、傾き、スパッタ付着、ねじ山損傷、溶け込み不足を確認します。ねじゲージまたは相手ボルトで通りを確認し、量産では抜取で押込み荷重、回転トルク、引張荷重を確認します。JIS Z 3140、JIS B 0251 メートルねじ用限界ゲージ、JIS B 0205 メートル並目ねじを基準に検査します。

なぜ必要か

溶接ナットは塗装後や最終組立後に不良が見つかると、交換作業が困難です。溶接直後にねじ通りと位置を確認することで、後工程でのボルト斜め入り、締付不良、部品取付不能を防ぎます。

使用製品

  • ウエルドナット:ねじ通り、溶接強度、座面密着を検査します。
  • ボルト:検査用の相手ボルトとして、ねじ通りと座面当たりを確認します。
  • ネジ規格:呼び径、ピッチ、ねじ等級の確認に使用します。

用途・役割

検査工程では、製品として組み込まれる前に溶接ナットの機能を保証します。ゲージが通らないナット、傾いたナット、溶接焼けでねじ山が荒れたナットを流出させません。

選定基準

強度区分は最終組付けボルトの強度区分と締付トルクを基準にします。材質は溶接ナットと相手ボルトの組合せで焼付きが出ない鋼製同士を基本にします。使用環境は溶接後の未塗装状態、塗装前洗浄前、工程内検査台です。規格はJIS B 0205、JIS B 0251、JIS B 1196、JIS Z 3140を確認します。

引用仕様書名または参考基準名

JIS B 0205 メートル並目ねじ、JIS B 0251 メートルねじ用限界ゲージ、JIS B 1196 溶接ナット、JIS Z 3140 スポット溶接部の検査方法です。

次工程

表面処理、塗装、マスキング管理へ進みます。

工程6:表面処理と塗装後のねじ保護

工程名

脱脂、リン酸塩処理、電着塗装、粉体塗装、ねじ部保護です。

工程内容(仕様書ベース)

溶接ナット付き板金を洗浄し、塗装またはめっき工程へ投入します。塗膜がねじ内部へ厚く入ると、後工程でボルトが締まらなくなるため、ねじ通り確認またはタップさらいの管理基準を設けます。JIS H 8610 電気亜鉛めっき、JIS K 5600 塗料一般試験方法を参考に、膜厚と密着性を管理します。

なぜ必要か

溶接ナットは溶接熱で表面が酸化します。塗装前処理を行わないと、ナット周辺から錆が発生します。一方で塗膜がねじ山に入りすぎると、ボルトの初期かじりと締付トルク上昇が発生します。

使用製品

  • ウエルドナット:塗装後もボルト締結できるよう、ねじ内の塗膜管理を行います。
  • シールビス:水や油の侵入を嫌うカバー部で、溶接ナットと組み合わせて使います。
  • シール座金:塗装筐体の貫通部で防水性を確保するために使います。

用途・役割

屋外制御盤、農業機械カバー、建機外装、車載下回りカバーでは、溶接ナット部を防錆しながら、組立時のボルト締結性を維持します。

選定基準

強度区分は相手ボルト8.8以下を基準にし、塗装後も締付軸力を確保します。材質は鋼製溶接ナットと鋼製ボルトの組合せを基本にします。使用環境は屋内乾燥、屋外雨掛かり、油分付着、粉じん環境です。規格はJIS B 1196、JIS H 8610、JIS K 5600を確認します。

引用仕様書名または参考基準名

JIS B 1196 溶接ナット、JIS H 8610 電気亜鉛めっき、JIS K 5600 塗料一般試験方法です。

次工程

最終組立、ボルト締結、トルク管理へ進みます。

工程7:最終組立とボルト締結

工程名

相手部品取付、ボルト締結、トルク確認です。

工程内容(仕様書ベース)

溶接ナットに対して、ブラケット、カバー、レール、端子台、ヒンジをボルトで締結します。締付トルクはJIS B 1083 ねじの締付け通則、JIS B 0205 メートル並目ねじ、JIS B 1180 六角ボルトを参考に、ボルト径、強度区分、座面条件、潤滑条件ごとに設定します。

なぜ必要か

溶接ナットは組立作業者が裏側ナットを保持しなくても締結できるため、作業時間を短縮できます。量産ラインでは片側作業で締結できるため、ロボット締付、自動ナットランナー、作業者によるトルクレンチ締付に向いています。

使用製品

  • ウエルドナット:最終組立時の母材側めねじとして機能します。
  • 六角ボルト 並目:ブラケット、ヒンジ、レールなどの一般締結に使用します。
  • キャップボルト:工具スペースが限定される機械装置内部で使用します。
  • JISワッシャー:座面陥没を抑え、塗装面への局部荷重を分散します。
  • バネ座金:軽振動を受けるカバー固定部で戻り回転を抑えます。

用途・役割

溶接ナットは、組立側からボルトを差し込むだけで締結できる母材側部品です。六角ボルトは高い締付力を得る締結材、キャップボルトは狭い場所の高強度締結材、ワッシャーは座面保護材として使います。

選定基準

強度区分は一般筐体で4.8、機械フレームで8.8、振動部位で10.9を検討します。材質は鋼、ステンレス、表面処理鋼を用途別に選びます。使用環境は屋内設備、車載内部、屋外筐体、振動を受ける搬送装置です。規格はJIS B 1083、JIS B 1180、JIS B 1256、ISO 898-1、ISO 898-2を確認します。

引用仕様書名または参考基準名

JIS B 1083 ねじの締付け通則、JIS B 1180 六角ボルト、JIS B 1256 平座金、ISO 898-1、ISO 898-2です。

次工程

出荷検査、保全基準化、交換部品管理へ進みます。

工程8:出荷検査と保全時の再締結管理

工程名

出荷前確認、締付トルク記録、保全部品管理です。

工程内容(仕様書ベース)

組立後にカバー浮き、ブラケットがたつき、ボルト未締結、溶接ナット剥離を確認します。保全時に脱着する部位は、ボルト呼び径、締付トルク、使用ワッシャー、交換基準を作業標準書に記載します。ISO 9001 品質マネジメントシステム、IATF 16949 自動車産業品質マネジメント、JIS B 1083 ねじの締付け通則を参考に記録管理します。

なぜ必要か

溶接ナット部は現場保全で繰返し脱着されます。過大トルクで締めると、ナットのねじ山破壊、溶接部剥離、板金の座屈が発生します。出荷時から再締結条件を明確にすることで、保全現場で同じ締結品質を再現できます。

使用製品

用途・役割

ウエルドナットは保全作業時の着脱点になります。ノルトロックワッシャーは振動で軸力が抜ける部位を保護します。ロックタイトは低頻度分解部の緩み止めとして使います。

選定基準

強度区分は締付けるボルトの4.8、8.8、10.9に合わせ、ナット側のねじ山損傷を起こさない組合せにします。材質は鋼製溶接ナット、鋼製ボルト、ステンレスワッシャーを環境別に使い分けます。使用環境は振動、粉じん、屋外、保全時脱着、油分付着です。規格はJIS B 1083、ISO 9001、IATF 16949、ISO 898-1、ISO 898-2を確認します。

引用仕様書名または参考基準名

JIS B 1083 ねじの締付け通則、ISO 9001 品質マネジメントシステム、IATF 16949 自動車産業品質マネジメントシステムです。

次工程

市場使用、点検、交換部品発注へ進みます。

工程のまとめ

参照規定

JIS B 1196 溶接ナット、JIS B 1052 ナットの機械的性質、ISO 898-2、JIS B 0205 メートル並目ねじ、JIS B 0251 メートルねじ用限界ゲージ、JIS B 1083 ねじの締付け通則、JIS Z 3140 スポット溶接部の検査方法、AIAG CQI-15、ISO 9001、IATF 16949を参照します。

必要商品

現場での使い分け

溶接ナットは、裏側に手が入らない箱形構造、薄板でタップ山数が不足する箇所、量産で片側作業にしたい箇所に使います。T型溶接ナットは、板厚が薄い筐体、端部近くの締結、座面を広く取りたいサービスカバー部に使います。振動がある装置では、ウエルドナットと六角ボルトに加えてノルトロックワッシャーを組み合わせます。

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